記憶の中の時計。

きれいな月。

十五夜は、すぐね。

こんなふうに、

時は、

確実に動き、過ぎて行く。

 

わたしは、

    確かに生きてきた。

柔らかな甘い空気を吸ったり、

冷たい、苦い風に吹かれたり、

暖かく絡みつく、いたずらっ子な風。

 

あーっ。

 

だれか、いらっしゃいますか。

私のように、

記憶の中に時計をもっている。

その時計は、

   進むことを知らない。

 

とまったままなの。

 

年を重ねたあなたが、

    好きよ。

なのに、

時間が止まったままの私は、

あなたを

    苦しめていた。

私、

針を進められない。

 

あなたが、進めて。

 

二度と、

深い、海の底に落ちて行かないように。