人魚に、希望の足を。

やっと、水面に顔を出して

    呼吸が出来るようになったの。

水の中は冷たいけれど、

外の世界よりも、温かく感じることもある。

だから、

そこから、出られなくなってしまう。

私は、

水の中で動いていないと、

恐ろしさで、

体が固まってしまいそうになる。

 

私は、必死に

    手を伸ばす。

あなたの方へ。

 

涙の海にもどらないように。

心の海に沈まないように。

 

神様。

ずうっと、ずうっと、愛していた人に

人魚はやっと逢えました。

人魚に、

    希望の輝く足をください。

彼としあわせになるための、

    幸せという名の足をください。

わたしに、

しあわせの時間が、

残っているなら。

 

わたし、

神様のところへ旅立つとき、

彼に抱かれていたい。

小さなトマトをつんでもらったりして、

お話ししていたい。

そして、

しあわせだったと、

最後に、

残された時間がしあわせだったと、

    伝えて、

    笑顔で、

    天国に行きたい。

 

神様。

人魚を泡にしないで。

ほんの少しのしあわせでいい。

 

人魚がすてきな笑顔で

その人の前にいられるように、

おねがい、神様。

すぐに、

涙の海に沈みそうな人魚を

たすけて。