油絵の匂いに包まれ。

雨がやんで良かった。

分厚い雲からも、綻びから青い空が見えてきた。

 

いつぶりだろう。

大切な恩師に会いに行ってきた。

油絵の匂いに包まれて見たかったのかもしれない。

     自分の、

     今を

ほんとうの自分を、

     確認したかったのかもしれない。

恩師は、明るく、相変わらず、

なんだー、おめー、を連発する。

 

でも、わかってる。

先生は、私がどんなにか、せつなくて会いにきたことを。

だから、

帰るとき、

    春先は、眠れなくなるんだ。

    がんばれよ。

    またこい。

大先生になってしまった方だけど、私にとっては

真実、師とよべるのは先生だけ。

歯に衣着せぬところも、

全て正直なところも、

嘘のない会話。ケンザイ。うれしかった。

 

やっと画家になれた、それが嬉しい。

黄金の時間なんだ。と。

     わかんねーべなー。

わかりますー、と、ふぐみたいにふくれてやった。

 

私だって、アトリエから小鳥のさえずりを聞いて、

ふわふわクッションはネコの特等席。

ときどき、コーヒーや、ハーブティーを入れて、

私は油絵を描いて、

彼は、小説を書くの。書いてほしい。

 

暖かな陽射し。

縁側から見える、季節の花。

あなたと、見ていたい。

大好きだったパパとママのように。

 

叶わない夢だけれど。

    そんなところで、最期をむかえられたらすてき。

そう、油絵かかなくちゃ。

 

そう、私の絵で幸せになれるような絵を。

 

時間がない。

人なんて、いつ死ぬかわからないんだから。

キャンバスはらなければ。

    ファイト。