深い海の底から月を見ていたのだろうか。
暗い海の中から空を見上げていたのだろうか。
にぎやかな子供たちの声と、小さくて可愛らしい感触の手。私を明るい光のもとへと引っ張って行く。
なぜだろう。
目を閉じると、足もとは、とても冷たくて暗い。
だけど、上を見上げると、そこは、暖かくて眩しいほどに明るい。
私は、今まで、太陽を見ずに、月ばかりを見てきたのか。
地上で生きたいのに、声を出す勇気もなく、心に嘘をついて。
いくら、水の中で美しい声で歌っても現実の快楽にうちけされて、消えてしまったはず。
知らなかった。
地上の世界は、まだ、未知の世界。
私は、水面で大きくジャンプしないと、地面に足をつけることができない。
怖い。
でも、眩しい光の方へ、
泳いでいかなくちゃ。